公務外で復路約10万円増|福岡県議の航空運賃はなぜ全額公費だったのか

福岡県議会のハノイ訪問後、1人の県議が派遣団と別行動し、台湾に滞在しました。

その結果、復路の航空運賃は派遣団と一緒に帰国する場合より約10万円高くなり、増加分を含む実費が公費から支給されました。

台湾での行動は、正式な議会公務ではありません。ただし、単なる観光でもなく、福岡県と台湾の連携に関係する要人との面会だったと県議会は説明しています。

福岡県監査委員は、明らかに違法または不当とまではいえないと判断しました。

それでも、見過ごせない問題があります。

一般の県職員なら支給できない可能性がある行程について、県議には明確な費用弁償のルールがありませんでした。最終的には、議長の判断で実費が支給されています。

問われているのは、台湾で誰と会ったかだけではありません。公務と議員活動の境界を、誰が、どの基準で決めるのかです。

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どの海外訪問で航空運賃が10万円増えたのか

対象となったのは、2025年3月2日から4日まで行われた「福岡県議会・ハノイ市人民評議会友好提携10周年記念訪問団」です。

福岡県議会とハノイ市人民評議会は、2014年に友好交流促進の取決めを締結しました。今回の訪問では10周年を記念し、ワンヘルスの推進を加えた新たな取決めを結んでいます。

公式訪問団は県議5人、随行職員4人。ハノイ市人民評議会や人民委員会を訪問し、記念レセプションやハノイ福岡県人会との意見交換会にも参加しました。

公表された総経費は530万4,000円です。

項目 金額
議員旅費 269万4,000円
職員旅費 108万3,000円
委託費 152万7,000円
総経費 530万4,000円

当初の日程では、3月4日にハノイを出発し、台湾の空港で乗り継いで福岡へ戻る予定でした。

しかし、県議1人が台湾到着後に派遣団から離れ、別の日に帰国しました。この変更によって、その県議の復路航空運賃は約10万円高くなりました。

監査結果は、この県議が誰だったのかを公表していません。公式訪問団の参加者は公表されていますが、根拠のない特定はできません。

台湾での別行動は正式な公務ではなかった

福岡県議会事務局は、台湾での行動が「議会公務ではない」ことを認めています。

ただし、事務局の説明では、県議は台湾で、福岡県と台湾の連携促進に関係する要人と面会しました。監査委員も、台湾訪問の理由と面談相手を確認しています。

そのため、旅行や観光だけを目的とした完全な私的活動ではなく、県議としての政治活動に当たると判断されました。

ここは正確に分ける必要があります。

  • ハノイでの公式訪問は、県議会の公務
  • 台湾での要人面会は、議会公務ではない議員活動
  • 監査が確認した範囲では、単なる私的な観光ではない

「公務外」という言葉だけを切り取って、私的旅行の費用を県が負担したと断定するのは正確ではありません。

ただし、正式な公務でなかったことも事実です。その行程変更で生じた約10万円を、なぜ公費で負担できたのかは別に検証する必要があります。

一般職なら支給できない可能性があった

監査結果で最も重要なのは、県職員と県議で旅費の扱いが異なる点です。

県の人事課は、一般職の職員が私用のため台湾で別行動した場合、出張日程を超えた3月5日と6日は勤務上の出張に当たらないため、台湾から福岡までの航空運賃を支給できないと説明しました。

ところが、県議には一般職のような勤務時間の定めがありません。

海外旅行で公務の日程を外れた場合、議員にいくらまで費用弁償できるのかという具体的なルールも策定されていませんでした。

人事課は、議員への支給の可否と金額は「海外旅行に係る公費の支出であることを踏まえ、議長の判断によられたい」と回答しています。

つまり、一般職なら支給できない可能性がある行程について、県議の場合は明文化された基準ではなく、議長の判断に委ねられていました。

監査結果を読んで、私が引っかかったのは約10万円という額以上に、「ルールがなかった」という点でした。

県議会はなぜ増加分を含む実費を支給したのか

県議会事務局は、県議には勤務時間の概念がなく、議員の活動は議会活動と関係し、有益なものになり得るという特殊性を挙げています。

今回の台湾での面会も、議会公務ではないものの、福岡県と台湾の連携促進につながる議員活動だったと説明しました。

さらに、海外旅行で公式日程から外れた場合の支給上限を定めたルールがなかったため、原則通り実際にかかった航空運賃を支給したとしています。

監査委員は、台湾訪問の理由や面談相手を確認した上で、この支出を明らかに違法または不当とはいえないと判断しました。

この監査判断は尊重すべきです。違法な公金支出や私的旅行だったと断定する根拠はありません。

しかし、監査が違法性を否定したことと、制度として十分だったことは同じではありません。

「議員活動なら公費」の境界が曖昧なまま

県議会事務局の説明を広く認めれば、公式日程外の行動でも、地域外交や政策に関係する面会であれば、公費負担の対象になり得ます。

議員活動には、行政職員のような勤務時間や職務命令の枠がありません。県内外の政党活動、政務活動、議員外交、私的な人脈による面会が重なる場面もあります。

だからこそ、議員の場合は職員より緩い基準でよいのではなく、別の明確な基準が必要です。

少なくとも、次の点は事前に決めて公表すべきです。

  • 公式日程から離れることを誰が承認するのか
  • 公務外の議員活動に公益性があると判断する基準
  • 行程変更で増えた航空運賃を公費と本人のどちらが負担するのか
  • 面談相手や活動成果をどこまで報告するのか
  • 公費負担の上限を通常の帰国便の金額にするのか

今回は、実際の面会内容を監査委員が確認したため、明らかな違法・不当性はないとされました。

しかし、支出後の監査で公益性を確認できればよいという制度では、判断がその都度変わり、県民は同じ基準で比較できません。

公費を使うなら、出発前に境界を決めるべきです。

約10万円の問題をどう考えるか

約10万円は、海外視察費全体から見れば大きな割合ではありません。

それでも、この支出は重要です。公務と議員活動の境界が曖昧なまま、公費負担が議長判断で決まる仕組みを表しているからです。

台湾の要人との面会が福岡県に利益をもたらす可能性はあります。その場合は、面会目的、相手方、成果を示し、議会活動として正式に位置付ける方法もあったはずです。

正式な公務にしないのであれば、通常の帰国便との差額を本人負担とする考え方もあります。

どちらを選ぶにしても、事前のルールと公開された説明が必要です。

監査請求が棄却されたから、ここで議論を終えるべきではありません。

福岡県議会は、公務外の議員活動で海外出張の費用が増える場合について、承認手続、支給上限、本人負担の基準を明文化すべきです。

よくある質問

台湾で別行動した県議は誰ですか

監査結果は、別行動した県議の氏名を公表していません。公式訪問団の参加者は公表されていますが、その情報だけで個人を特定することはできません。

台湾滞在は私的な観光だったのですか

監査結果によれば、正式な議会公務ではありませんでした。ただし、福岡県と台湾の連携促進に関係する要人との面会が目的で、議員活動と無縁な私的活動ではないと県議会は説明しています。

約10万円の増加分は違法と判断されたのですか

いいえ。監査委員は、面会の理由と相手方を確認し、明らかに違法または不当とまではいえないと判断しました。ただし、公式日程を外れた海外旅行について、議員への費用弁償額を定めるルールはありませんでした。

まとめ

  • 2025年3月のハノイ訪問後、県議1人が台湾で別行動した
  • 台湾での行動は正式な議会公務ではなかった
  • 要人との面会を目的とした議員活動で、単なる私的観光とは確認されていない
  • 行程変更によって復路航空運賃が約10万円高くなり、実費が公費から支給された
  • 監査は違法・不当とまでは判断しなかったが、議員向けの明確な支給ルールはなかった

問題の中心は、約10万円という金額だけではありません。

公務外の議員活動に公費を使える境界が、県民に見えるルールになっていないことです。

福岡県議会は、次の同様の事例が起きる前に基準を明文化し、公開すべきです。

参考資料

政経プラスチャンネル

福岡県議会や公金の使われ方を、一次資料と会見記録から検証しています。続きは政経プラスチャンネルでご覧ください。

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