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公益通報者保護法の改正前・改正後を比較|2026年12月1日施行の変更点

法律・公益通報

改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号)は、2026年12月1日に施行されます。2026年10月28日現在は施行前で、11月30日までは現行法が適用されます。

改正の柱は、保護される人の範囲の拡大と、報復への対策の強化です。雇用される労働者などに加え、一定のフリーランス(雇用されず、事業として仕事を受ける人)も保護の対象になります。

あわせて、通報妨害・通報者探索(通報者の特定を目的とする行為)の禁止が加わります。

民間労働者への解雇・懲戒(規律違反に対する処分)については、その理由の推定(一定の事実があれば、反証がない限り別の事実もあるものとして扱うこと)が入ります。報復への刑事罰なども加わります。

ただし、通報すれば何でも保護されるわけではありません。個々の通報が保護されるかは、通報者の立場、通報の内容と目的、通報先ごとの要件などで決まります。この記事では、改正前と改正後を比較表で示し、項目ごとに条件と例外を説明します。

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まず押さえる3点

  • いつから:2026年12月1日施行。施行前の出来事への適用は、附則の経過措置で判断します。
  • 誰に:労働者、派遣労働者、退職者、役員などに加え、業務委託関係にあるフリーランスと、業務委託関係の終了後1年以内のフリーランスが加わります。
  • 何が変わるか:正当な理由のない通報妨害と通報者探索の禁止、公益通報(働く人などが、勤務先などの対象となる法令違反を知らせること)後1年以内の解雇・懲戒についての推定、通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰、事業者への監督の強化です。

改正法の施行日、改正の概要、新旧対照条文は、消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」で確認できます。

改正前・改正後の比較表

項目改正前(2026年11月30日まで)改正後(2026年12月1日施行)
通報者の範囲
労働者、派遣労働者、退職者、役員などが中心
特定受託業務従事者などのフリーランスと、業務委託関係終了後1年以内のフリーランスを追加
通報妨害
通報を妨げる行為について、改正法のような独立した禁止規定はない
正当な理由のない通報妨害を禁止。通報しない旨の合意などは無効
通報者探索
法定指針(法律に基づき、事業者がとるべき措置を定めた指針)などに基づく情報管理・探索防止が中心
通報者を特定することを目的とする行為を、正当な理由なく行うことを禁止
通報後の解雇・懲戒
通報を理由とする解雇・不利益取扱いは禁止されているが、今回の推定規定はない
通報後1年以内の解雇・懲戒は、通報を理由とするものと推定(民間労働者。起算点と例外は下記)
解雇・懲戒への刑事罰
公益通報を理由とする解雇・懲戒への直接の刑事罰はない
公益通報を理由に解雇・懲戒をした者への刑事罰を新設。個人は6か月以下の拘禁刑(刑事施設に収容する刑罰)または30万円以下の罰金、法人は3,000万円以下の罰金
事業者への監督
報告徴収、助言・指導、勧告など
常時使用する労働者が300人を超える事業者の従事者(内部通報の対応に当たり、通報者の身元情報を受ける指定担当者)の指定義務違反について、立入検査、命令、命令違反などへの罰則を追加
制度の周知
体制整備の中で求められていた
通報窓口、利益相反(当事者との利害関係で公正な判断が妨げられること)の排除、不利益取扱い・通報妨害・通報者探索の防止など、周知すべき事項を明確化

施行前も、現行法による保護や体制整備の義務はあります。表は、12月1日から加わる・変わる部分を比べたものです。

表の推定規定は、対象となる民間労働者の解雇・懲戒についてのものです。一般職の国家・地方公務員等への扱いは、後半の「公務員と国・自治体の扱い」で説明します。

1. 通報者の範囲:フリーランスが法律上の対象に加わる

事業者と業務委託関係にある「特定受託業務従事者」などのフリーランスと、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスが、公益通報者の範囲に加わります。公益通報を理由とする業務委託契約の解除など、不利益な取扱いも禁止の対象になります。

フリーランスの通報にも条件があります。不正の目的がないこと、法律が対象とする違反事実を知らせること、通報先に応じた保護要件を満たすことなどです。

適用範囲や、業務委託関係の終了後1年の考え方は、フリーランスも対象になる公益通報者保護法の改正で詳しく整理しています。

2. 通報妨害の禁止:通報しない約束を求める行為など

事業者が正当な理由なく、労働者等に公益通報をしない旨の合意を求めたり、通報した場合の不利益な取扱いを告げたりするなど、公益通報を妨げる行為が禁止されます。

通報妨害に当たる合意などの法律行為は無効です。秘密保持条項や誓約書という名前だけでは判断できません。その条項が公益通報を妨げる内容になっていないか、正当な理由があるかを確認する必要があります。

契約書、脅しに近い発言、社内ルールとの関係は、公益通報者保護法の通報妨害禁止はどこまでかで分けて説明しています。

3. 通報者探索の禁止:正当な理由のない「通報者探し」

事業者が正当な理由なく、公益通報者を特定することを目的とする行為が禁止されます。通報者を探し出して不利益な取扱いにつなげるような行為を、制度上の問題として明確に扱うための規定です。

事業者には、調査・是正に必要な情報の確認と、通報者を特定するための探索を区別することが求められます。誰が、何の目的で、どの情報を見たかを記録しておけば、調査が必要な範囲で行われたかを検証できます。

探索の範囲、調査担当者の分離、情報共有の制限は、公益通報者保護法の通報者探索禁止を参照してください。

4. 解雇・懲戒の推定:民間労働者の通報後1年

民間労働者による保護要件を満たす公益通報について、原則として通報日から1年以内の解雇または懲戒は、民事上、通報を理由として行われたものと推定されます(新3条3項)。

起算点には例外があります。2号通報(行政機関への通報)・3号通報(報道機関などへの通報)がされたことを事業者が知って処分した場合は、知った日から1年以内で判断します。

この推定は民事上のもので、刑事裁判の規定ではありません。また、一般職の国家・地方公務員等には適用されません(9条)。

推定は「必ず無効」という意味ではない

民事訴訟では、事業者側が「処分は通報を理由としたものではない」と反証できます。裁判所は、双方の記録と説明を基に判断します。

通報者本人も、解雇・懲戒の時期、通報の受付記録、評価や勤務状況、処分理由を時系列で残しておくと、経過を説明しやすくなります。

5. 刑事罰:公益通報を理由とする解雇・懲戒

保護要件を満たす公益通報を理由に解雇・懲戒をした行為者には、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が新設されます(新21条1項)。法人への罰金は3,000万円以下です(新23条1項1号)。

刑事責任は、処分理由の文書、決裁記録、通報との時間的関係などから、法律上の要件を満たすかを確かめて判断します。民事上の推定だけで、刑事裁判の有罪が決まるわけではありません。

6. 事業者への監督と、体制整備・周知の義務

常時使用する労働者が300人を超える(301人以上の)事業者は、従事者の指定と内部通報の対応体制の整備が義務です。300人以下では努力義務です。

民間事業者には、従事者指定義務の違反に対する立入検査、命令、命令違反への罰則などが加わります。

周知すべき事項も明確になります。通報窓口、利害関係のある担当者を外す方法、報復や探索・妨害を防ぐ措置、調査への協力などを、関係する人に知らせます(11条2項)。

企業が施行前に確認すべき項目は、企業が公益通報者保護法の改正前に確認すべき項目にチェックリストとしてまとめています。自治体向けには、自治体が施行前に確認すべき公益通報対応を参照してください。

補足:公務員と国・自治体の扱い

公務員と国・自治体には、民間と異なる規定があります。次の点は一括りにせず、項目ごとに読む必要があります。

  • 推定規定:3条2項・3項(3項が1年以内の推定)は、一般職の国家・地方公務員等には適用されません(9条)。
  • 個人への刑事罰:一般職公務員等への分限免職(勤務実績などの法定理由により公務員の身分を失わせる処分)・懲戒処分には、9条の読替えのうえで、21条1項の刑事罰が適用されます。
  • 法人罰:国・地方公共団体には、3,000万円以下の両罰規定(行為者とともに法人も罰する規定)は適用されません(23条2項)。
  • 監督規定:国・地方公共団体には、15〜16条の監督規定は適用されません(20条)。
  • 体制整備・周知:国・自治体も事業者として、労働者数に応じた11条の義務・努力義務があります。

補足:施行前の出来事への適用(経過措置)

過去の出来事に新しい規定が及ぶかは、附則の経過措置に沿って判断します。通報日、事業者が通報を知った日、処分日、業務委託の終了日を記録しておいてください。

  • 新しい刑事罰は、施行前の行為には適用されません。
  • 附則3条2項・3項は、施行前の解雇と施行前の懲戒について、推定規定の経過措置を分けて定めています。
  • 施行前の解雇にも、旧法3条の解雇無効を判断する際に推定規定が適用されます(附則3条3項)。
  • 施行前の懲戒には、新3条3項の推定規定は適用されません(附則3条2項)。

「施行前の出来事には改正法がまったく適用されない」とも、「すべて適用される」とも言えません。

改正前から変わらない注意点

  • 施行日前も、公益通報を理由とする解雇や不利益な取扱いは現行法で禁止されている
  • 通報者探索や情報漏えいを防ぐ適切な情報管理は、改正前から必要とされている
  • 改正後も、通報の内容・通報先・目的などの保護要件を確認する必要がある
  • 匿名通報でも、調査や是正には具体的な情報と追加確認が必要になる
  • 証拠を集める場合も、無断アクセス、持ち出し、改ざん、第三者への拡散は避ける

立場別に見る施行前の確認ポイント

企業

  • 通報窓口、従事者、調査担当者、意思決定者の役割を整理する
  • 通報者探索、通報妨害、情報漏えい、不利益取扱いを防ぐ規程と教育を確認する
  • フリーランス、退職者、役員からの通報を受け付ける導線を確認する
  • 通報後の人事措置について、通報との関係を検証できる記録を残す

自治体

  • 内部職員等からの通報と、外部の労働者等からの通報の窓口を整理する
  • 担当部署が、通報者を特定できる情報にアクセスできる範囲を確認する
  • 通報対象事実に応じた所管部署への引継ぎと、利益相反の排除を確認する
  • 改正後の国・地方公共団体向けガイドラインを担当者に共有する

通報者本人

  • いつ、どこで、誰が、何をしたかを、評価と事実に分けて記録する
  • 通報先、通報日時、受付番号、受付担当者、返信内容を保存する
  • 通報前後の配置、評価、契約、勤務条件などの変化を時系列で残す
  • 証拠の取得方法が適切か迷うときは、無断取得や拡散をせず相談する

よくある質問

改正法はいつから施行されますか?

2026年12月1日です。2026年10月28日現在は施行前のため、改正法の新設規定と、現行法・指針を分けて確認する必要があります。

フリーランスなら、どんな通報でも保護されますか?

保護されるとは限りません。改正法は対象となるフリーランスの範囲を広げますが、公益通報の内容、不正の目的がないこと、通報先に応じた保護要件などの確認は必要です。

通報後1年以内なら、必ず解雇が無効になりますか?

必ず無効になるわけではありません。対象となる民間労働者の解雇・懲戒には、一定の要件の下で報復理由の推定が働きます。事業者は反証でき、裁判所が双方の記録と説明から判断します。

通報者探しや通報妨害は、すべて犯罪になりますか?

改正法が禁止するのは、正当な理由のない通報者探索と通報妨害です。調査・是正に必要な範囲の情報確認まで一律に禁じるものではありません。改正法で新設される刑事罰は、公益通報を理由とする解雇・懲戒に対するものとして定められています。

匿名で通報できますか?

要件を満たせば、匿名でも公益通報できます。ただし、行政機関へ氏名などを記した書面を出すことで保護を受ける類型は、匿名では使えません。匿名だと、追加確認や調査結果の通知が難しくなる場合もあります。安全性と連絡の取りやすさを考え、必要に応じて相談窓口を利用してください。

根拠となる条文(改正後)

この記事の内容の根拠を、改正後の条文番号で整理します。条文は参議院公開の改正法律全文で確認できます。

  • 2条1項3号:保護される通報者にフリーランス(特定受託業務従事者)を追加
  • 3条3項:民間労働者の保護要件を満たす公益通報について、原則として通報日から1年以内の解雇・懲戒を、民事上、通報を理由としたものと推定。2号・3号通報を事業者が知って処分した場合は、知った日が起算点。一般職公務員等には適用されない(9条)
  • 11条2項:労働者等への周知その他の必要な措置を法律上の義務として明示
  • 11条の2:正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意を求める行為などを禁止(法律行為である場合は無効)
  • 11条の3:正当な理由なく、公益通報者を特定することを目的とする行為を禁止
  • 21条1項・9条:保護要件を満たす公益通報を理由とする解雇・懲戒をした者に、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。一般職公務員等への分限免職・懲戒処分には9条の読替えがある
  • 23条1項1号:両罰規定により、法人に3,000万円以下の罰金。国・地方公共団体にはこの両罰規定は適用されない(23条2項)
  • 15条の2第2項:従事者指定義務違反への勧告に従わない事業者に対する命令。国・地方公共団体には15〜16条を適用しない(20条)
  • 16条1項:従事者指定義務に関する報告・立入検査。国・地方公共団体には適用しない(20条)
  • 附則3条2項・3項:施行前の解雇と施行前の懲戒について、推定規定の経過措置を区別。施行前の解雇には、旧法3条の解雇無効の判断に推定規定を適用(3項)

罰則と推定規定のくわしい解説は、公益通報者保護法の罰則と推定規定|12月1日施行で何が変わるかにまとめています。

参照した消費者庁「公益通報者保護制度Q&A」(2026年5月29日時点)には、12月1日施行の改正事項も含まれます。凡例では、施行前の「本法」から未施行部分を除くとされているため、現在の制度と改正後の制度を分けて読んでいます。

公式資料と関連リンク

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このページは2026年8月4日に作成し、10月25日と10月28日に関係条文と消費者庁の資料を再確認しました。施行後の政令、指針、Q&A、運用状況が更新された場合は、内容を見直します。個別の通報や不利益取扱いについては、消費者庁の公益通報者保護制度相談窓口、行政機関、弁護士などに相談してください。

本文の改稿:Claude Opus 5.5(高)/用語の補足・出典と条件の点検:Codex。資料確認日:2026年10月28日。

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