福岡県議会の蔵内勇夫・前議長(公式表記は「藏内勇夫」)の議員辞職に伴い、筑後市選挙区(定数1)で県議会議員補欠選挙が行われます。告示は2026年9月25日(金)、投開票は10月4日(日)です。
この記事では、選挙の日程と基本データ、立候補を表明している人、前回2023年の結果を整理します。あわせて、この補選のきっかけを作った当事者である蔵内前議長が、辞職から3週間たっても公の場で説明をしていない問題を取り上げます。候補者の情報は告示日に確定するため、判明した時点で更新します。
筑後市選挙区の県議補選2026|日程と基本データ
福岡県の発表によると、補欠選挙の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選挙名 | 福岡県議会議員補欠選挙(筑後市選挙区) |
| 理由 | 蔵内勇夫氏の議員辞職(2026年8月25日表明)による欠員 |
| 選挙すべき人数 | 1人 |
| 告示日 | 2026年9月25日(金)※立候補受付は8時30分〜17時 |
| 投票日 | 2026年10月4日(日) |
| 開票 | 10月4日(日)投票終了後 |
| 当選証書の付与 | 10月5日(月)11時〜 |
| 選挙人名簿登録者数 | 3万9960人(2026年6月1日現在) |
※補足:期日前投票は、公職選挙法の規定により告示日の翌日から投票日の前日まで行われるのが原則です(今回は9月26日〜10月3日が目安)。投票所と時間は筑後市選挙管理委員会の案内で確認してください。
9月10日には筑後市役所で立候補予定者説明会が開かれました。FBS福岡放送によると、出馬を表明している2人の陣営に加え、立候補を検討している政党関係者など、合わせて6陣営が出席したと報じられています。
当選者の任期は約半年
補欠選挙で当選した議員の任期は、前任者の残りの任期です(公職選挙法260条)。現在の福岡県議の任期は2027年春の一般選挙までのため、当選者が県議として活動できる期間は約半年にとどまります。それでも、議長ポストをめぐる金銭授受疑惑の第三者調査や、政治倫理条例づくりなど、県議会の立て直しに関わる議論にはこの間に一票を投じることになります。
立候補を表明している人(9月16日時点)
報道によると、これまでに新人2人が出馬の意向を示しています。
| 氏名 | 年齢 | 党派 | 経歴(報道による) |
|---|---|---|---|
| 河野一弘(こうの・かずひろ) | 54 | 共産党 | 柳川市出身。会社員を経て共産党筑後地区常任委員 |
| 牛島慶二郎(うしじま・けいじろう) | 49 | 無所属 | 筑後市出身。国内外で事業を展開し、現在は筑後市の自動車学校の取締役 |
河野一弘氏(共産党・新人)
共産党福岡県委員会は9月7日に会見を開き、河野氏の擁立を表明しました。FBSの報道によると、河野氏は筑後市選挙区を一連の問題の「震源地」と位置づけ、疑惑の真相解明と議会改革、県民の声が届く県政を訴えています。共産党は現在、福岡県議会に議席を持っていません。
牛島慶二郎氏(無所属・新人)
牛島氏は記者会見で出馬の意向を示しています。FBSによると、牛島氏の父親は約40年前の県議選で蔵内氏に敗れています。牛島氏は、県と市のパイプ役となって筑後地域の発展に貢献したいと訴えていると報じられています。
ほかの政党の動き
TNCテレビ西日本は、説明会に候補擁立を模索しているとみられる政党関係者も出席したと伝えています。蔵内氏が長く所属した自民党が候補を立てるかどうかは、本記事執筆時点で報道からは確認できていません。構図は告示日の9月25日に確定します。
前回2023年の筑後市選挙区の結果
2023年4月9日の県議選では、筑後市選挙区は一騎打ちでした。筑後市選挙管理委員会の開票結果は次のとおりです。
| 候補者 | 党派 | 得票数 |
|---|---|---|
| 蔵内勇夫(当選) | 自民党 | 9,889票 |
| 北島いちお | 無所属 | 8,237票 |
有効投票数は1万8126票、無効投票数は223票でした。当選した蔵内氏と次点の差は1652票です。蔵内氏は1987年の初当選から10期にわたって議席を守ってきましたが、前回は得票率で見ると約55対45と、決して大差ではありませんでした。長年の「指定席」が空いた今回、有権者がどのような判断を示すかが注目されます。
辞職したら終わりではない|蔵内前議長の説明責任
ここからは、この補選の原因をつくった当事者について、見解を述べます。
「40秒」の辞職表明と、守られていない「後日の報告」
蔵内氏は8月25日、東京都内で報道陣に対し、全国都道府県議会議長会の会長、福岡県議会議長、県議会議員をいずれも辞職すると表明しました。RKB毎日放送によると、取材に応じた時間は約40秒で、辞職の理由について詳しい説明はありませんでした。「会見はしないのか」「なぜこのタイミングなのか」という記者の問いにも答えなかったと報じられています。
その場で蔵内氏は「後日福岡でゆっくり報告を行いたい」と述べています。しかし、FNNプライムオンラインによると、辞職から10日たった9月4日の時点でも会見は開かれず、記者クラブが会見を要請しています。本記事執筆時点(9月16日)でも、蔵内氏が福岡で会見を開いたという報道は確認できていません。
自分で「報告する」と約束した以上、その約束を果たすのは最低限の責任です。約束した本人が沈黙を続けている状態は、県民に対して誠実とはいえません。
疑惑を否定するなら、なおさら説明の場が必要だ
金銭授受疑惑について、蔵内氏は関与を否定しています。告発した吉松源昭県議が名指しした当時の自民党幹部5人も、全員が疑惑を否定していると報じられています。
否定している以上、蔵内氏は「疑われる理由がない」ことを自分の言葉で示せる立場にあるはずです。辞職の理由を「県議会の混乱が続くことは本意ではない」とする趣旨にとどめ、質問を受けないまま表舞台を去ったことで、かえって県民の疑問は残ったままになりました。「辞職」は責任の取り方の一つにすぎず、説明の代わりにはなりません。
吉松県議はFBSの取材に「疑惑の中心人物は辞職した蔵内前議長。蔵内前議長は辞職会見も含め、一切、説明責任を果たしていません」と述べ、百条委員会など正式な場で説明を求める必要性に言及しています。9月10日に大島道人議長あてに提出した抗議文でも、蔵内前議長の参考人招致を求めたと報じられています。
「第三者委員会に積極的に協力」の約束は果たされるか
蔵内氏は辞職表明の際、「第三者委員会につきましては、積極的に協力をし、解明を図りたい」と述べました。ところが、FBSによると、9月10日時点で県議会の第三者委員会は設置されておらず、議会事務局は福岡県弁護士会の推薦を受けた弁護士との契約手続きに入っている段階です。
大島議長は「すでに議員の立場にない関係者に対しても、調査への積極的な協力を求めてまいります」と述べています。議員を辞めた人に出席や回答を強制する力は、第三者委員会にはありません。だからこそ、蔵内氏の「積極的に協力」という言葉が本物かどうかが、そのまま真相解明の行方を左右します。調査が始まった後、蔵内氏が聞き取りに応じたかどうかは、委員会の報告書で必ず確認されるべき点です。
※補足:地方自治法100条に基づく調査(いわゆる百条委員会)は、自治体の事務に関する調査のために関係者の出頭や証言を求めることができ、正当な理由なく拒んだ場合は「六箇月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金」の対象になります(同条3項)。任意の協力に頼る第三者委員会とは、ここが大きく違います。
パリ訪問の夕食会費も新たに判明
説明を求められている事柄は、金銭授受疑惑だけではありません。FBS福岡放送などによると、2025年11月に県が実施したフランス・パリでの海外活動で、蔵内氏を含む県議5人が1人あたり約20万円の夕食会に参加し、計約100万円を県が公費で負担していたことが、9月15日に明らかになりました。服部誠太郎・福岡県知事は、第三者委員会で費用の妥当性を検証する考えを示しています。
高額な海外訪問は、蔵内氏が議長として県議会を主導していた時期の問題です。当時の議長として、その必要性と費用をどう判断したのか。これも本人にしか語れない部分があります。
筑後市の有権者にとっての意味
蔵内氏が辞職したことで、筑後市の有権者は、疑惑について本人の説明を聞かないまま、後任を選ぶことになります。2027年春の一般選挙まで待てば、有権者が蔵内氏の議員活動に直接審判を下す機会がありました。本人の辞職によって、その機会も説明の機会も同時に失われた形です。
補欠選挙は、公費を使って行われる選挙です。原因をつくった当事者が、選挙の前に一度も有権者の前で説明しないまま終わってよいはずがありません。蔵内氏には、告示日までに福岡で会見を開き、少なくとも次の点に自分の言葉で答えることを求めます。
- 辞職を決めた具体的な理由と、なぜ8月25日だったのか
- 議長ポストをめぐる金銭授受疑惑を否定する根拠
- 8月17日の臨時会で、自身への辞職勧告決議案の採決が動議で中止されたことを、どう受け止めているのか
- 第三者委員会の聞き取りに応じるかどうか
- パリ訪問などの海外活動で、公費による高額な支出を議長としてどう判断したのか
候補者に聞きたいこと
補選は、筑後市選挙区の代表を選ぶだけでなく、県議会が信頼を取り戻せるかを問う選挙でもあります。立候補する人には、次の点について具体的な考えを示してほしいと考えます。
- 金銭授受疑惑の第三者調査や、百条委員会の設置に賛成するか
- 県議会が検討している政治倫理条例に、どんな内容を求めるか
- 議員の海外活動と、その費用の公開をどう見直すか
- 蔵内氏が進めてきたワンヘルス関連事業を、筑後地域の視点でどう評価するか
- 任期約半年のうちに、筑後市のために何を実現するのか
まとめ
- 蔵内勇夫・前議長の議員辞職に伴う福岡県議補選(筑後市選挙区、定数1)は、9月25日告示、10月4日投開票
- 出馬を表明しているのは、共産党新人の河野一弘氏(54)と無所属新人の牛島慶二郎氏(49)の2人。ほかの政党の動きは告示日までに確定する
- 前回2023年は蔵内氏が9,889票、次点が8,237票で、差は1652票だった
- 当選者の任期は2027年春までの約半年
- 蔵内氏は「後日福岡で報告」と述べながら、辞職から3週間たっても会見を開いておらず、疑惑への説明責任を果たしていない
辞職で幕を引くのではなく、説明で区切りをつける。それが、10期39年にわたって筑後市の有権者から議席を預かってきた政治家の、最後の務めではないでしょうか。本記事は、告示日以降の候補者確定や選挙結果に合わせて更新します。
政経プラスチャンネルのご案内
政経プラスチャンネルでは、福岡県議会の金銭授受疑惑から議長交代、補欠選挙までを、一次資料をもとに継続して解説しています。最新の動きを見逃さないよう、チャンネル登録をお願いします。
政経プラスチャンネルを登録する
さらに深く読みたい方へ
疑惑の全体像や会派ごとの投票行動の分析は、noteで詳しくまとめています。
https://note.com/poliplus
関連記事
- 福岡県議会議長選はなぜくじ引き?39対39と無効票6票を条文で検証
- 蔵内勇夫氏が県議辞職|金銭授受疑惑の否定と今後の調査
- 蔵内勇夫前議長とは|県議10期・採決不参加から8月25日の辞職まで
- 福岡県議会の金銭授受疑惑とは?経緯と問題点をわかりやすく解説
- 県議が辞職しても疑惑の調査は続く?議会・監査・捜査の違い
- 吉松源昭県議の告発で何が動いたか|中尾氏辞職と100条の2調査
- 福岡県議会議員はどう選ばれる?44選挙区・定数87と地域差を解説
主な確認資料
- 福岡県「福岡県議会議員補欠選挙(筑後市選挙区)の選挙日程等について」
- 筑後市「福岡県議会議員選挙結果(令和5年4月9日)開票」
- FBS福岡放送「蔵内氏辞職に伴う県議補選 これまでに2人が出馬表明」(2026年9月7日)
- FBS福岡放送「蔵内氏の辞職に伴う県議補選 説明会に6陣営」(2026年9月10日)
- TNCテレビ西日本「蔵内前議長の辞職に伴う県議補選 出馬意向の2人のほかに擁立模索の動き」(2026年9月10日)
- RKB毎日放送「わずか40秒の辞職表明 福岡県議会の蔵内勇夫前議長」(2026年8月31日)
- FNNプライムオンライン「蔵内元議長 “県議会のドン”と呼ばれた男の軌跡 辞職後に続く“沈黙”」(2026年9月7日)
- FBS福岡放送「『金銭授受疑惑』県議の告白から2か月 第三者委員会はいつ?」(2026年9月10日)
- FBS福岡放送「蔵内前議長らパリで1人20万円の夕食会 福岡県が公費で負担」(2026年9月15日)


