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兵庫県の介護支援はなぜ「上限の59%」に削られたのか――物価高対策の予算不足を現場に転嫁する設計

兵庫県政

記事タイプ:制度解説・介護支援の補助上限

兵庫県の介護支援では、補助上限が当初の59%へ減った。本稿が2026年7月15日の案内を記録した内容で、申請額の予算超過が理由とされていた。

減ったのは補助上限の41%だ。個々の事業所の支出や、実際の交付額が一律41%減ったという意味ではない。

たとえば、当初20万円の上限だった事業所は11万8千円に、50万円の上限だった訪問介護事業所は29万5千円に下がる。補助の目的が、燃料費、暑さ・寒さ対策用品、非常用電源、備蓄品といった「サービスを止めないため」の費用であることを考えれば、これは単なる事務的な調整では済まない。

申請額が予算を超えたことは、現場の支援需要の大きさを示す。予算不足を補助上限の減額で処理したことは、しわ寄せを介護事業所に負わせる構図である。県は、申請の全体像と追加支援を検討した経過を説明すべきだ。

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7月の上限59%の記録と、9月の案内

7月15日の案内を記録した本稿には、「申請額が予算額を超過したため」、補助上限額を一覧表の59%に減額して交付決定したとある。

9月30日更新の県ページは、同じ理由による補助上限の一律調整を説明している。旧59%一覧は、今回の確認では再取得できなかった。

申請・実績報告の受付は終了し、最終支払いは10月中旬の予定だ。

対象になるのは、訪問介護、通所介護、訪問看護、訪問リハビリ、福祉用具貸与、小規模多機能、グループホーム、居宅介護支援、特養、老健など幅広いサービスだ。補助対象経費には、次のようなものが含まれる。

  • 訪問・送迎に伴う燃料費や有料道路通行料
  • ネッククーラー、熱中症対策用品、防寒・雪害対策用品
  • スポットクーラー、ヒーター、加湿器、給湯器、遮熱カーテンなど
  • 飲料水・食料の備蓄、ポータブル発電機、蓄電池、簡易トイレ、衛生・医療用品

対象は、利用者宅へ向かう車の費用、猛暑や厳寒から利用者と職員を守る物品、停電や災害時にも介護を継続するための備えだ。

当時の県の案内では、交付決定通知の日付以降から8月20日までに購入した物品等が対象だった。交付決定後に補助上限が減れば、事業者はその範囲で調達計画を組み直す必要がある。

当初の上限と比べ、事業所の補助枠はいくら減ったか

次の表は、本稿が記録した59%の上限と、当初上限を比較したものだ。

類型・当初上限減額後の上限減少額
一般的な20万円枠11万8千円8万2千円
30万円枠17万7千円12万3千円
40万円枠23万6千円16万4千円
訪問回数が多い訪問介護の50万円枠29万5千円20万5千円
定員100人の施設系サービス(6千円×定員)35万4千円24万6千円

訪問介護は、同一建物減算のある集合住宅併設型を除けば、月間の延べ訪問回数に応じて30万~50万円の上限が設定されていた。移動を伴う在宅サービスほど燃料費の影響を受けやすいという制度設計だったからだ。

50万円枠の上限は29万5千円となり、当初上限との差は20万5千円だ。この差は、実際の購入費に対する不足額とは区別する必要がある。

補助枠が減れば、事業所は蓄電池、スポットクーラー、備蓄品のどれを優先するか、調達計画を見直すことになる。県は、現場でどんな支出が見送られたのかを把握すべきだ。

食材料費は定員1人当たり1万8千円の別枠

県の制度には、設備・備品・燃料・防災用品などを対象とする「介護事業所等サービス継続支援事業」と、入所施設等の食材料費を対象とする「介護施設等サービス継続支援事業」がある。

食材料費支援は、特養、老健、介護医療院、短期入所、養護老人ホーム、軽費老人ホームなどを対象に、定員1人当たり1万8千円を上限とする別枠だ。

本稿が記録した59%への減額は、設備・備品・燃料等の「介護事業所等」枠の案内である。食材料費の別枠も同じ率で減額されたとは、その案内から確認できない。

それでも、利用者の食事だけを守れれば十分ではない。訪問できる車、夏を越す空調、停電時の電源、衛生用品がなければ、在宅・通所・施設のどのサービスも不安定になる。

11億700万円は厚労省の所要見込額、申請総額は未公表

旧稿には、県議会の福祉部資料の数値として11億700万円、想定4,800か所と記録していた。今回、その元の行を再取得して確認できていないため、確定した県予算や対象件数としては扱わない。

今回確認した厚生労働省の資料には、兵庫県の所要見込額として国費8億3,000万円、県負担2億7,700万円、計11億700万円が示されている。負担割合は国4分の3、都道府県4分の1だ。

この額は、国の補正予算案の閣議決定額から機械的に算出した見込みで、予算審議によって変わり得る。確定した県の予算・執行額とは区別する。

11億700万円を予算として全額使い、全申請に同じ59%を掛けた、と仮定すると、当初上限ベースの申請相当額は約18億7,600万円、不足相当額は約7億6,900万円となる。

これは、所要見込額と旧案内の率を使った条件付きの試算だ。実費額や個別調整によって結果は変わる。県が実際の申請総額を18億7,600万円と公表した数字ではない。

県は9月30日の公表ページでも、申請件数、サービス類型別の申請額、予算超過の正確な額、調整率の算定経過を示していない。

どのサービスがどれだけ申請し、いくら不足したのか。県には、事業者と県民へ説明する責任がある。

県は予算不足の原因と、追加支援の検討結果を示すべきだ

申請が予算を超えたとき、全対象者を一律に圧縮する方法には、一見すると公平さがある。抽選で落とすよりは、少額でも広く配る方がよいという考え方もあり得る。

県には、一律配分の利点に加え、予算不足が生じた理由と対応策を説明する責任がある。

この制度は、県自身が「物価高騰や猛暑、厳寒、災害等」の中で介護を継続するために必要だと位置付けたものだ。しかも補助対象には、夏の温度管理や非常用電源、備蓄品といった、後回しにすれば利用者の安全に関わる費目が並ぶ。

需要が予算を大幅に上回ったなら、第一に確認すべきなのは「現場が不必要な申請をしたのか」ではない。むしろ、当初の予算見積もりが現場の実態から離れていなかったかである。

国も、介護分野が物価・賃金上昇に直面する厳しい状況にあるとして、この事業を緊急措置に位置付けた。厚労省は、今回の国庫補助事業と、自治体が物価高対策に使える「重点支援地方交付金」は趣旨が異なり、双方を活用できるとしている。

追加支援に使える財源の有無も含め、県は次の問いに答えるべきだ。

  1. 申請総額はいくらで、予算をいくら上回ったのか。
  2. 旧稿に記録した想定4,800か所という数値を含め、当初見込みと申請件数はどう違い、サービス類型別・地域別にはどうだったのか。
  3. 59%という率は、どのような計算と調整で決めたのか。
  4. 重点支援地方交付金、県の補正予算、国への追加要望などで不足分を補う検討をしたのか。
  5. 今年度に埋められないなら、次の猛暑・災害期までに、何をどこまで恒久化するのか。

補助金の縮小は、いつか利用者と家族の問題になる

介護事業所が購入を見送るのは、帳簿上の数字だけではない。

発電機や蓄電池がなければ、停電時の対応力は落ちる。空調・暑熱対策が不足すれば、利用者と職員の負担は増す。訪問の移動経費が重ければ、採算の厳しい地域ほど事業継続は難しくなる。

介護の費用増は、高齢者、家族、そして働く人の負担を増やす。サービスが減れば、家族が担う時間と負担が増え、地域で暮らし続ける選択肢が狭まる。

「予算を超えたから59%」で終わらせてはならない。今回の事態は、介護現場の支援需要と予算との大きな差を示している。

県は、申請と不足の全体像を公開し、どこまで補填できるかを示すべきだ。そのうえで、次回に同じ事態を繰り返さない予算設計へ改める必要がある。介護を止めないための予算が足りないなら、その事実をまず隠さず、正面から県民に説明すべきである。

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確認資料・参考リンク

本記事は、介護事業所等へのサービス継続支援に関する兵庫県・兵庫県議会・厚生労働省の公表資料を主な確認資料として作成しています。

数値を読む際の注意

  • 「59%」は、当初の補助上限に対する交付上限の割合です。本記事では実質41%減として表記しています。
  • 約18億7,600万円の申請相当額、約7億6,900万円の不足相当額は、厚労省の所要見込額11億700万円を予算と仮定し、59%で割った条件付きの試算です。県が実際の申請総額として公表した数値ではありません。
  • 59%への減額は、本稿が7月15日の案内で記録した「介護事業所等サービス継続支援事業」が対象です。食材料費を対象とする別枠への適用は、同告知からは確認できません。

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