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財政危機でもZ世代施策を守る?|斎藤知事の優先順位を検証

兵庫県政

財政が厳しい中で若者向け施策を守るなら、県は事業ごとに費用、利用実績、成果、公平性を示す必要があります。教育、就労、住宅、子育て支援には、人口流出や人手不足への対策と、困っている人を支える役割があります。

兵庫県の斎藤元彦知事は、県立大学の授業料等無償化をはじめとする「若者・Z世代応援施策」(Z世代:若い世代を指す呼び名)を堅持する考えです。この記事では、財政の見通し、施策の内容、県が示した成果を整理します。

原稿作成時の最終確認日は2026年8月11日です。以下の当初予算の数値は2月資料の記録です。10月25日に財政資料と会見を再照合し、8月27日の計画による別の試算も追記しました。

この記事の要点

  • 2月の当初予算では、2026〜2028年度の収支不足を計530億円と予測。8月の別の前提の試算では計460億円。
  • 斎藤知事は、財政難の中でも若者・Z世代応援施策を県政の柱として維持する方針を示している。
  • 「Z世代施策」は、県立大学無償化だけでなく、学校環境、奨学金返済、就労、住宅、妊娠・出産支援などを含む。
  • 転出超過は大幅に改善したが、県も住宅価格など外部要因を認めており、施策だけの効果とは断定できない。
  • 守る施策と見直す施策を分けるには、事業別の予算、対象者、利用実績、成果、代替案の公開が必要。

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当初予算案では3年間の収支不足を530億円と見込む

兵庫県が2月に示した2026年度当初予算案は、一般会計(税金などを主な財源とする行政の基本的な会計)2兆3,182億円です。金利上昇による借金返済費の増加と、毎年度の収入で支出を賄いきれない状態が財政を圧迫しています。

当初予算案の資料は、収支不足を2026年度130億円、2027年度180億円、2028年度220億円と見込み、3年間で530億円としています。

2月12日会見で知事は、財政基金(年度間の収入と支出の差や不測の事態に備える積立金)の2025年度末見込みを236億円、2026年度当初予算で使う額を129億円と説明しました。

単純に引くと107億円ですが、積立額や普通交付税の精算分などもあるため、それだけで年度末残高は決まりません。同時期の予算別冊9頁では、2026年度末の残高を109億円と見込んでいます。県は、年度の税収や収支次第では基金を取り崩さないことも検討するとしています。

2月の資料では、借金返済の重さを示す実質公債費比率(標準的な収入に対する借金返済などの負担の割合)も、3か年平均で2025年度19.0%、2026年度20.2%になる見通しです。18%を超えると、新たな地方債の発行に国の許可が必要になります。

県は、金利負担と収支不足に対応するため、歳入・歳出の見直しを具体化する必要があります。

その後、県は8月27日に公債費負担適正化計画(借金返済などの負担を適切に管理するための計画)を策定しました。2025年度の実質公債費比率は3か年平均19.2%となり、起債許可団体(地方債の発行に国などの許可が必要な自治体)へ移行しています。

同計画15頁は、経済成長率と金利の前提を7月公表の試算に変え、2026〜2028年度の収支不足を130億円・150億円・180億円、計460億円と試算しています。2月の530億円と、資料時点・前提が異なります。

計画は、2027年度から投資規模を最低10%抑える方針です。若者施策の一つ一つをどこまで維持するかは、個別の予算と実施結果で確認する必要があります。県の正式な計画

斎藤知事はZ世代施策を「堅持する」と説明した

2026年5月13日の知事記者会見で、斎藤知事は県立大学の授業料等無償化をはじめとする若者・Z世代応援施策について、財政が厳しい状況でも取組を堅持したいと述べました。

同じ会見では、海外事務所の整理・統合など、他の事務事業を見直す考えも示しています。知事の説明では、Z世代施策を重点分野として維持し、他の事業や運営方法を見直す方針です。

これは知事が示した政治的な優先順位です。選挙で掲げた施策を守ることには合理性があります。個々の費用対効果は、実績を基に別途検証する必要があります。

Z世代施策は、教育・就労・住宅・出産などの支援を含む

若者・Z世代応援パッケージは、名称から受ける印象より広い施策群です。2026年度予算資料では、主に次の分野が示されています。

  • 教育費:県立大学の授業料等無償化、奨学金返済支援
  • 教育環境:県立学校の空調、老朽施設の修繕、私立学校の特色づくり
  • 就労:高校生・大学生の県内就職、ケアリーバー(児童養護施設などを出た人)の自立、企業とのマッチング
  • 住宅:子育て世帯向け住宅、県営住宅への入居支援
  • 妊娠・出産:不妊治療、産後ケア、遠方の医療機関へ通う交通費
  • 困難を抱える若者:不登校、ヤングケアラー(日常的に家族の世話を担い、負担が大きい子ども)、医療的ケア児(日常生活でたんの吸引などの医療的ケアが必要な子ども)への支援

この中には、将来の人口や税収への投資という側面だけでなく、現在困っている子どもや家庭を支える行政サービスも含まれています。継続や見直しは、それぞれの事業の役割に沿って判断する必要があります。

転出超過は5,185人改善。施策別の効果はこれから検証

兵庫県が成果として挙げているのは、人口移動の改善です。2025年の転出超過は2,102人で、前年の7,287人から5,185人改善しました。

県の資料では、前年からの社会増減の改善数はファミリー層が2,256人、20歳代が2,217人でした。これらは転入人数や人口の純増数ではなく、転入と転出の差が前年からどれだけ改善したかを示す数字です。

斎藤知事は2月4日の会見で、奨学金返済支援制度の利用実績が1,000人を超えたとも説明しました。

人口移動の改善には、施策以外の要因もあります。斎藤知事自身が、東京や大阪圏の住宅価格高騰、兵庫県の住宅価格や交通利便性を挙げています。

施策の実施時期に人口移動が改善したことは確認できます。どの事業が何人の転入・定着につながったかは、読んだ公開資料からは分かりません。事業ごとの効果を調べる必要があります。

困難な子どもへの支援と、大学無償化の公平性を分けて考える

財政健全化を理由に、効果が現れるまで時間のかかる教育や子育て施策から削れば、短期的な収支は改善しても、若者の流出、人手不足、出生数の減少を悪化させる可能性があります。

不登校支援、医療的ケア児への通学支援、児童養護施設を出た若者への支援には、今、支援が必要な人へ行政サービスを届ける役割があります。利用者の生活がどう改善したかも、評価の対象にすべきです。

一方、県立大学の授業料等無償化のように対象や金額が大きい施策は、県外大学へ通う若者との公平性、所得制限の要否、卒業後の県内定着、国の高等教育支援との重複を継続的に検証する必要があります。

維持する事業を判断する基準は、対象・費用・成果・公平性・代替案

限られた財源の中で優先順位を判断するには、パッケージ全体ではなく事業ごとに、次の項目を示す必要があります。

  1. 対象:誰が、何人利用できたのか
  2. 費用:初期費用だけでなく、毎年続く負担はいくらか
  3. 成果:就学、就職、定着、生活改善にどうつながったか
  4. 公平性:似た状況なのに対象外となる人を合理的に説明できるか
  5. 代替案:所得制限、国制度との組み合わせ、民間や市町との分担で効果を保てないか

必要性の高い事業は、利用者数が少なくても維持する理由があります。利用者が多い事業では、所得の高い世帯も同じ支援を受ける合理性を説明する必要があります。県は、事業の目的に合った基準で優先順位を示すべきです。

県は、維持する事業と見直す事業の根拠を公開すべきだ

政経プラスは、若者支援を将来世代への投資として優先することには合理性があると考えます。同時に、幅広い事業を一つの名称でまとめるだけでは、費用と効果を判断できません。

斎藤県政がZ世代施策を堅持するなら、「未来への投資だから」という説明にとどめず、事業ごとの予算、利用者、成果、公平性、見直し結果を公開する必要があります。それが、財政健全化と若者支援を両立させるための最低条件です。

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