福岡県議会のハワイ訪問で、旅行会社との委託契約が97万9,000円から651万1,840円へ増額されました。
約6.65倍です。
97万9,000円から651万円。資料を見たとき、私も桁を見間違えたかと思いました。
福岡県監査委員は、追加された業務は訪問に必要で、最終的な金額にも不自然な点はないと判断しています。随意契約という方法も違法とはしませんでした。
しかし、監査は契約手続を問題なしとはしていません。
457万4,000円の予算が組まれていたのに、予定価格は97万9,000円。低い金額で契約した後、大幅な増額変更を行う手法について、監査委員は「不自然な予定価格の立て方」と指摘し、契約方法の是正を求めました。
不正と断定できる支出ではない。それでも、公金の契約として説明が足りなかった。これが監査結果の正確な読み方です。
海外視察23件、総額2億6,496万2,000円の全体像はこちらです。
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住民監査請求の結果と、監査対象になった範囲はこちらで整理しています。
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97万9,000円から651万1,840円に増えた契約
対象となったのは、2025年1月13日から17日まで行われた福岡県議会のハワイ州議会友好訪問です。
江口善明副議長を団長に県議4人、職員3人が参加しました。ハワイ州議会、ハワイ州知事、ハワイ大学、在ホノルル日本国総領事館、ハワイ福岡県人会などを訪問しています。
訪問全体の公費負担額は1,413万円でした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 議員旅費 | 541万5,000円 |
| 職員旅費 | 220万3,000円 |
| 委託費 | 651万2,000円 |
| 総経費 | 1,413万円 |
今回検証するのは、現地車両、通訳、添乗員、ガイド、意見交換会などを旅行会社に委託した費用です。
契約の推移は次の通りです。
| 段階 | 金額 |
|---|---|
| 予算額 | 457万4,000円 |
| 当初の予定価格 | 97万9,000円 |
| 当初契約額 | 97万9,000円 |
| 変更後の契約額 | 651万1,840円 |
| 増加額 | 553万2,840円 |
当初契約は2024年12月19日に締結されました。増額変更は出発3日前の2025年1月10日です。
何が追加されて553万円増えたのか
当初契約に含まれていたのは、添乗員1人、車両1台、現地ガイド1人、ハワイ福岡県人会との意見交換会経費でした。
その後、参加者や行程が確定したことに伴い、業務が追加されました。
- 添乗員1人の追加
- 車両1台の追加
- 現地ガイド1人の追加
- 県人会意見交換会の参加者6人分の追加
- 新たな意見交換会の開催経費
- 通訳4人
- Wi-Fiレンタル料
- 添乗員のタクシー代などの現地諸雑費
監査委員は、これらをハワイ州議会友好訪問に必要な業務だったと認定しました。
訪問時期がハワイの繁忙期だったことも踏まえ、行程変更に伴う金額の増加は妥当と判断しています。旅行会社の積算内容を確認した結果、不自然な点はなく、変更後の金額も妥当とされました。
したがって、651万1,840円という最終金額だけを根拠に、水増しや架空発注と断定することはできません。
監査は、契約に県議が関与した形跡や、贈収賄を疑わせる事務処理も確認できなかったとしています。
なぜ当初契約を97万9,000円にしたのか
福岡県議会は、海外訪問では政府や議会の要人との面会時間が直前まで決まらず、車両、通訳、ガイドなどの仕様を早期に確定できないと説明しています。
ただ、航空券とホテルは価格を抑えて確実に確保するため、早く手配しなければなりません。行程管理の面でも、航空券やホテルと現地業務を同じ旅行会社に任せる方が合理的だとしています。
そこで県議会事務局は、最初の契約では確実に必要な業務だけを対象とし、行程や参加者が決まった段階で追加契約する方法を採ってきました。
この説明には実務上の理由があります。
要人の予定によって直前に行程が変わる海外訪問で、数カ月前に通訳の人数や車両の台数まで完全に固定するのは難しいでしょう。
しかし、今回は過去の実績や見積もりを基に457万4,000円の予算を計上していました。それにもかかわらず、予定価格を97万9,000円にした理由が決裁書類で明らかにされていませんでした。
監査が問題にしたのは「予定価格」の立て方
予定価格とは、自治体が契約前に設定する価格の基準です。事業の内容、取引の実例、数量、難易度などを踏まえ、契約額が妥当かを判断する土台になります。
監査委員は、予算上の積算があるのに、それを大きく下回る予定価格を設定し、随意契約後に増額変更した事例が3件あったと認定しました。
今回のハワイ訪問については、予算上、添乗員費用だけで199万円が計上されていました。ところが当初の予定価格に入れた添乗員費用は20万円です。
監査は、この方法を「実例価格等を基に計上された予算額を無視した執行方法と言わざるを得ない」と指摘しています。
また、変更契約時に提出された見積書には、具体的な数量や単価を示す積算内容が残されていませんでした。
監査委員は、直ちに法令違反とはいえないとしながらも、県民への説明責任を果たすには、変更金額の詳しい内訳を保存し、発注者が妥当性を判断する必要があるとしています。
必要な業務だったことと、契約手続が適切だったことは別の問題です。
随意契約そのものは違法とされなかった
随意契約とは、一般競争入札を行わず、特定の事業者と契約する方法です。ただし、随意契約だから直ちに違法というわけではありません。
県議会事務局は、現地の事情に詳しく、急な行程変更や要人との面会に対応できる事業者が必要だとして、実績のある旅行会社2社から見積もりを取り、最低価格を示した事業者と契約していました。
監査対象となった6件の委託契約は4社が受注しており、特定の1社だけが受注していた事実もありません。
監査委員は、旅行会社2社に見積もりを依頼した手法が法令や規則に違反するとは判断しませんでした。
ただ、能力を持つ事業者がほかにも存在する可能性はあります。監査は、競争性と公平性を確保するため、できるだけ多くの業者から見積もりを取る努力を求めました。
97万9,000円という金額が、入札を避ける目的で意図的に設定されたと認定された事実はありません。数字だけから目的を断定するべきではありません。
それでも、最終契約額の約15%にすぎない予定価格を設定した理由は、県民が確認できる形で残すべきでした。
今後は原則5者以上による競争入札へ
福岡県議会は監査の指摘を受け、海外活動の委託契約を見直す方針を示しました。
今後は、過去の実績や予算上の積算を基に、詳細な仕様と予定価格を設定します。その上で、指名委員会が原則5者以上の旅行会社を指名し、指名競争入札を行うとしています。
県議会自身が契約方法を変更するのは、従来の方法では透明性と競争性に十分な説明ができなかったからです。
改善方針は評価できます。
しかし、制度を変えるだけでなく、今後の契約では当初予定価格、変更理由、追加した数量と単価、最終契約額を一つの資料で公開すべきです。
県民が見たいのは、「必要だった」という結論だけではありません。何が何人分、何台分追加され、いくら増えたのかという検証可能な内訳です。
97万円から651万円への増額をどう考えるか
監査結果を踏まえれば、最終的な651万1,840円を不正支出と断定することはできません。追加業務の必要性と金額の妥当性は確認されています。
問題は、457万4,000円の予算がありながら、97万9,000円の予定価格を設定した理由を記録していなかったことです。
最初に小さな契約を結び、出発直前に6倍を超える増額を行えば、県民が不自然だと感じるのは当然です。
監査委員も、この予定価格の立て方は県民に不信感を抱かせかねず、透明性、公平性、競争性の面で問題があると明記しました。
「違法ではなかった」で終わらせる話ではありません。
福岡県議会は、監査が求めた契約方法の是正を実行し、変更契約の数量と単価を県民が確認できる形で公開すべきです。
よくある質問
651万1,840円は不正な支出だったのですか
監査委員は不正な支出とは認定していません。追加された添乗員、車両、ガイド、通訳、意見交換会などは必要で、積算内容と変更金額も妥当だったと判断しています。
97万9,000円は入札を避けるための金額だったのですか
そのように認定された事実はありません。監査結果では、海外活動の特殊性を理由とする随意契約自体は違法ではないと判断されています。ただし、予算額を大きく下回る予定価格を設定した理由が記録されておらず、契約手続の是正が求められました。
福岡県議会は今後も随意契約を続けるのですか
県議会は、海外活動の委託契約について、詳細な仕様と予定価格を定め、原則5者以上を指名する指名競争入札へ変更すると説明しています。
まとめ
- 2025年1月のハワイ訪問で、委託契約が97万9,000円から651万1,840円へ増額された
- 添乗員、車両、ガイド、通訳などの追加業務は必要で、最終金額も妥当と監査された
- 予算額457万4,000円に対し、予定価格を97万9,000円にした理由は明確に記録されていなかった
- 変更契約の見積もりには、数量や単価の詳しい積算内容が残されていなかった
- 監査は支出を違法とはしなかったが、契約の透明性、公平性、競争性に問題があるとして是正を求めた
- 県議会は原則5者以上による指名競争入札へ変更する方針を示した
必要な仕事に公費を支払うこと自体が問題なのではありません。
最初から分かっていた予算と、後から増えた業務を分け、県民が金額を追える契約にすることが必要です。
参考資料
政経プラスチャンネル
福岡県議会や公金の使われ方を、一次資料と会見記録から検証しています。続きは政経プラスチャンネルでご覧ください。


