兵庫県で、退職した幹部職員の外郭団体への再就職が目立っている。
神戸新聞によると、兵庫県は2024年7月から2026年6月までに退職した本庁課長・室長級以上の職員83人について、再就職状況を公表した。このうち、県が出資などする外郭団体には39人が再就職しており、割合は約47%に達した。
神戸新聞の報道と、兵庫県の公式公表資料をもとに、この数字が何を意味するのかを整理する。
「天下り」は人数ではなく、割合が増えた
今回の数字を過去の公表値と比べると、重要な点が見えてくる。
| 対象期間 | 幹部職員の退職者数 | 密接公社等への再就職 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2022年7月~2024年6月 | 91人 | 40人 | 44.0% |
| 2023年7月~2025年6月 | 112人 | 45人 | 40.2% |
| 2024年7月~2026年6月 | 83人 | 39人 | 47.0% |
前回は45人だったため、今回は外郭団体への再就職者数そのものが急増したわけではない。むしろ、退職者全体が112人から83人へ減ったことで、外郭団体へ移った割合が40.2%から47.0%へ上昇した。
つまり、今回の「5割近く」という数字は、再就職者の絶対数が増えたというより、分母が小さくなったことで比率が上がった面が大きい。
過去の数値は、兵庫県の2025年公表資料と2024年公表資料で確認できる。各回とも、2年間の退職者を母数に、直近1年間の再就職状況を集計しているため、単純な年度別統計ではない点にも注意が必要だ。
定年引き上げで「分母」が変動している
背景には、定年引き上げによる退職者数の変動がある。
兵庫県は2025年度について、定年引き上げの影響で年度末の定年退職者が発生しないと説明している。一方、2026年度は定年退職者が増える見込みで、定年退職が2年に1度発生する仕組みになっている。
今回の集計期間には、定年退職者が少ない年度が含まれている。そのため、83人という退職者数は、通常の年度と単純に比較できない。47%という比率の上昇には、制度変更による統計上の影響も含まれている。
それでも39人という数字を軽く見られない理由
ただし、39人という数字を軽く見ることはできない。
兵庫県の公式資料では、今回、民間企業への再就職が11人、関係団体等が16人、密接公社等が39人で、合計66人だった。密接公社等は、これらの再就職者の約6割を占める。
さらに66人のうち63人が「兵庫県退職者人材センター」を通じて再就職しており、密接公社等への39人は全員が同センター経由だった。
ここから見えてくるのは、個人が偶然に再就職しているというより、県と関係の深い法人群を受け皿とした再就職の仕組みが、制度として定着している姿だ。
県と外郭団体の「人材循環」
兵庫県は、観光、農林、環境、住宅、道路、土地開発、まちづくりなど、県行政と密接に関わる多数の公社・公益法人・株式会社を「公社等」として整理している。
こうした団体にとって、県庁で培った行政経験や業界との人脈が役立つ場合はある。職員の知識や経験を地域のために活用するという説明にも、一定の合理性はある。
しかし、県の外郭団体は、県の出資、補助金、委託事業などと関係を持つ。そこへ、県の意思決定に関わっていた幹部が退職直後に移れば、実際に不正がなくても、「県との関係を利用した再就職ではないか」という疑念が生じる。
法律で規制されていても、説明責任は残る
兵庫県の条例は、元職員が退職後2年間、在職中の職務に関係する契約や処分について、現職職員に要求・依頼することを禁止している。また、管理職だった職員には、退職後の再就職先を任命権者に届け出る義務もある。
ただし、これらは主に利害関係への働きかけを規制する仕組みだ。
誰を、どのような基準で採用したのか。公募は行われたのか。報酬はいくらなのか。県からの補助金や委託事業と、再就職先の役職に関係はないのか。現在の公表資料だけでは、こうした点までは十分に分からない。
斎藤県政だけの問題ではない
この傾向を、斎藤知事の個別の指示によって増えたと断定することもできない。
兵庫県退職者人材センターは2008年に設置され、退職管理条例も2016年に施行されている。今回の仕組みは、現在の知事だけでなく、過去から続いてきた県の人事・外郭団体政策の問題として見る必要がある。
問われるのは、再就職の透明性
兵庫県で本当に問われているのは、退職者の再就職を全面的に禁止するかどうかではない。
必要な経験を持つ人材を登用するなら、募集の有無、選考方法、報酬、県との契約関係、退職前の担当業務との関係を、県民が確認できる形で公開すべきだ。外郭団体の経営改善や役割の見直しも同時に進めなければならない。
今回の数字は、「天下りが人数ベースで急増した」とまでは言えない。しかし、退職者の約半数が県と密接な団体へ移り、しかもその多くが公的な人材センターを通じて再就職している。
それは、偶発的な人事ではなく、県庁と外郭団体の間に長年続く人材循環の構造があることを示している。
「人材活用」なのか、「天下り」なのか。その違いを決めるのは、肩書ではなく、採用の透明性と、県民に対する説明責任である。


