議会を見えるようにする。
政治家が掲げるには簡単な言葉ですが、本当に問われるのは、議員自身に不都合な判断まで見える形にするかどうかです。
2026年8月17日、福岡県議会では藏内勇夫議長への議長職辞職勧告決議案が提出されました。しかし、林泰輔県議の採決中止動議が賛成49、反対35で可決され、本案は採決されませんでした。
採決中止に反対した35人の一人が、久留米市・うきは市選出の井上寛県議です。
井上県議は、自身の政策として「議会の見える化や開かれた議会の構築」を掲げています。
今回、議員ごとの判断を隠す結果となる採決中止に反対しました。掲げた政策と実際の一票が、同じ方向を向いたと評価できます。
ただし、辞職勧告決議案そのものへ井上県議が賛成する予定だったかは不明です。本案は採決されず、公式記録がないからです。
この記事では、会社員、久留米市議、県議という経歴、2023年県議選、福祉・教育・災害分野の質問を確認し、採決中止に反対した意味を掘り下げます。
▼採決中止動議の賛成・反対議員一覧
福岡県議会・採決中止動議の賛否一覧|49人と35人の全氏名
井上寛県議の基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 井上寛 |
| 選挙区 | 久留米市・うきは市 |
| 会派 | 公明党 |
| 当選回数 | 1回 |
| 生年月日 | 1966年4月6日 |
| 年齢 | 60歳(2026年8月24日現在) |
| 議会運営 | 議会運営委員会 |
| 常任委員会 | 農林水産委員会・副委員長 |
| 特別委員会 | 空港・交通インフラ調査特別委員会 |
| 学歴 | 福岡県立明善高校、創価大学法学部 |
| 主な経歴 | 会社員、久留米市議、公明党筑後総支部長 |
県議会公式プロフィールによると、井上県議は公明党所属の1期目で、議会運営委員、農林水産委員会副委員長、空港・交通インフラ調査特別委員です。
本人プロフィールでは、久留米市生まれ、明善高校、創価大学法学部卒業。会社の総務経理部課長などを経て、2019年に久留米市議へ初当選し、2023年に県議へ転じたと説明しています。
企業の管理部門と市議会を経験して県議会へ入った人物です。
2023年県議選は1万6355票で2番手当選
2023年の久留米市・うきは市選挙区は、定数5に8人が立候補しました。
| 候補者 | 得票 | 結果 |
|---|---|---|
| 原口剣生 | 27,452票 | 当選 |
| 井上寛 | 16,355票 | 当選 |
| 新井富美子 | 13,883票 | 当選 |
| 中村香月 | 13,462票 | 当選 |
| 江口善明 | 11,821票 | 当選 |
| 小川誠嗣 | 7,738票 | 落選 |
| 岸本善成 | 4,648票 | 落選 |
| 細川博司 | 2,098票 | 落選 |
投票率は36.79%。井上県議は16,355票を得て、初挑戦ながら2番手で当選しました。
同じ選挙区では、原口剣生、江口善明の両県議が採決中止に賛成。井上寛、新井富美子、中村香月の3県議は反対側です。
5人の判断が分かれたからこそ、誰がどう投票したかは選挙区の有権者にとって重要です。
「議会の見える化」を政策として明記
井上県議の政策ページには、「市民に開かれた議員制度改革」という項目があります。
そこで本人は、議会の見える化や開かれた議会の構築を掲げています。
これは今回の問題に直結する政策です。
辞職勧告決議案に賛成でも反対でも、採決すれば議会の結論と議員の判断が分かります。採決を止めれば、本案への個人別賛否は記録に残りません。
井上県議は採決中止に反対しました。本人が掲げる「見える化」に沿った判断です。
選挙公約は、言葉ではなく具体的な場面で検証されます。今回の一票は、井上県議の掲げる議会改革に説得力を与えました。
自殺対策と学校の重大事案を質問
井上県議は2026年2月、自殺対策を一般質問で取り上げました。
2025年2月には学校における自殺事案を質問しています。
子どもや若者の自殺は、学校、家庭、医療、福祉のどこか一つだけで防げる問題ではありません。重大事案が起きた後の検証と情報共有、遺族への配慮、再発防止まで問われます。
扱いの難しい問題を議場に持ち込み、行政の対応を記録へ残すことは議員の重要な役割です。
障がい、聞こえ、介護を具体的に扱う
井上県議の質問には、制度の境目で困る人への視点があります。
- 2023年6月:障がい福祉サービスの「65歳問題」
- 2024年2月:ヒアリングフレイル
- 2024年6月:軟骨伝導イヤホン、発達性ディスレクシア
- 2024年12月:医療・介護分野のマイナンバー活用
- 2025年6月:介護人材への理解促進
障がい福祉の65歳問題は、年齢を境に介護保険が優先され、利用者の負担やサービス内容が変わる問題です。
発達性ディスレクシアは、知的能力に問題がなくても読み書きに大きな困難が生じます。周囲が特性を理解しなければ、本人の努力不足と誤解されかねません。
聞こえにくさ、読み書き、年齢による制度移行など、外からは見えにくい困難を具体的な政策課題として扱ってきた点は評価できます。
豪雨災害と地域の医療基盤にも向き合う
2023年9月には、同年7月の大雨災害を質問しました。
久留米・うきは地域では豪雨被害が繰り返され、住宅、道路、農地、医療機関へ影響が及びます。農林水産委員会副委員長という現在の役職からも、被災農家や農地の復旧は重要な課題です。
2025年9月には医療法人の事業承継と定款の柔軟化を扱いました。地域の医療機関を次世代へ引き継ぐことは、高齢化が進む地域の医療アクセスを守ることにつながります。
制度上の細かな論点に見えても、地域で診療を受け続けられるかという生活の基盤に関わります。
議会運営委員として採決を止めなかった
井上県議は議会運営委員です。
議会運営委員会は、本会議の日程、議案や動議の扱い、討論、採決などを協議します。今回のような動議と採決の意味を、日常的に扱う立場です。
県議会公式ページは採決中止動議の結果を49対35と公表していますが、個人名を掲載していません。
TNCは議場で起立した賛成49人を確認し、氏名を報道しました。井上県議はその一覧に含まれていません。全議員名簿と不参加者を照合すると、反対35人に入ります。
公明党の10県議も全員が反対側でした。
井上県議の一票は、「議会の見える化」という本人の政策を、抽象論ではなく実際の採決で示したものです。
「見える化」は投票結果の公式公表まで進めてほしい
採決中止に反対したことは評価できます。しかし、議会の見える化は一度の投票だけでは完成しません。
今回、個人別賛否を県議会公式サイトで確認できないため、報道機関の議場確認と名簿照合が必要になりました。
県民が知りたいのは、会派ごとの人数だけではありません。自分の選挙区の議員が、どんな理由でどう投票したかです。
井上県議には、議会運営委員として、動議や議案の個人別賛否を公式ページで公表する仕組みを提案してほしいと思います。
本人の反対理由も、県政報告やウェブサイトで明らかにすれば、「開かれた議会」という政策はさらに具体性を持ちます。
TNC調査では79%が個人別賛否の公開を求めた
TNCが2026年8月19日に県内有権者1,020人から回答を得た調査では、採決中止を「不適切な対応で納得できない」とした人は75.0%でした。
「採決を行い各議員の賛否を明らかにすべきだった」は79.0%。次の統一地方選への投票行動に影響するとした回答も合計79.1%でした。
井上県議個人の支持率ではありません。それでも、本人が掲げる見える化と今回の反対票が、有権者の多数意見と同じ方向を向いたことは確認できます。
井上寛県議に答えてほしい7つの質問
- 採決中止動議に反対した具体的な理由は何ですか。
- 辞職勧告決議案が採決されていたら、どちらへ投票する予定でしたか。
- 掲げている「議会の見える化」と今回の判断は、本人の中でどうつながっていますか。
- 議会運営委員として、採決直前の緊急動議をどう評価しますか。
- 個人別投票を県議会公式サイトで公表する制度を提案しますか。
- 久留米市・うきは市の5県議で判断が分かれたことをどう説明しますか。
- 反対理由を本人サイトや県政報告で公表しますか。
よくある質問
Q1. 井上県議は辞職勧告決議案に賛成したのですか?
断定できません。本案は採決されておらず、確認できるのは採決中止動議への反対です。
Q2. 井上県議は「議会の見える化」を政策にしていますか?
はい。本人の政策ページで、議会の見える化や開かれた議会の構築を掲げています。
Q3. 井上県議の反対は公式の記名投票ですか?
県議会公式ページは個人別賛否を公表していません。TNCの賛成者確認と県議会公式名簿などの照合に基づきます。
まとめ
- 井上寛県議は久留米市・うきは市選出、公明党所属の1期目
- 会社員、久留米市議を経て2023年に県議へ初当選
- 2023年県議選は16,355票で2番手当選
- 議会運営委員、農林水産委員会副委員長
- 自殺対策、障がい福祉、教育、介護、豪雨、地域医療を質問
- 本人の政策として「議会の見える化」「開かれた議会」を掲げる
- 2026年8月17日の採決中止動議に反対
政治家の政策は、言葉と行動が一致するかで評価されます。
井上県議は「議会の見える化」を掲げ、今回、議員の判断を見えなくする採決中止に反対しました。
この一票を政経プラスは評価します。次は、反対理由を自ら公表し、県議会公式サイトで個人別投票を確認できる制度へ進めてほしいと思います。

