候補者になりすましてうそを流す。発言を切り取り、事実と違う人物像を広める。相手を傷つけることを、選挙の熱気で正当化する。こんな手口が政治参加の顔をしてまかり通ることを、厳しく糾弾する。
沖縄県知事選をめぐって、偽メールや誤情報の拡散が報じられている。これは「ネットにはいろいろな意見がある」で片づけられる問題ではない。有権者が候補者を判断するための材料を、虚偽によって汚す行為である。
そして問われるのは、流した人間の責任だけではない。良識を掲げる政治家、政党、影響力のある発信者が、味方に都合のよい虚偽にも具体的に異議を唱えられるか。そこを曖昧にしたまま、「デマをばらまけば勝てる」という誤った成功体験を育ててはならない。
2026年9月12日時点の報道・検証に基づく論評。沖縄県知事選は翌13日投開票。本稿は選挙結果や偽情報の得票への影響を確定したものではない。
なりすましと発言のすり替えを、選挙の道具にするな
RBCは9月11日、玉城デニー・沖縄県知事を装うメールが県内各所に届いたと報道した。投票した人への返礼などをうたう内容に対し、陣営は本人・事務所の関与と内容を否定し、法的対応を準備していると説明した。出典:RBC(9月11日)
現時点で、このメールを誰が作り、誰が指示したかを本稿は確認できていない。特定の候補者や政党が仕掛けたと決めつけることはしない。
そのうえで、なりすましによって候補者の信用を損なう手口そのものは、断固として非難されるべきだ。本人が掲げていない政策や行為を、本人のものとして流す。有権者を欺き、攻撃された側には弁明の負担まで押しつける。民主的な競争を内側から壊す行為である。
日本ファクトチェックセンター(JFC)は8月26日、辺野古移設を玉城氏が決めたとする投稿を誤りと判定した。過去の経緯や発言を調べた検証であり、玉城氏の政策を無条件に支持するという話ではない。批判の前提となる事実が違う、という指摘だ。出典:JFC(8月26日)
県政の実績も基地政策も、厳しく批判してよい。だからこそ、批判のために事実をねじ曲げる行為を許してはいけない。うその上に積み上げた攻撃は、政策論争を深めるどころか、本当に問うべき責任まで見えなくする。
兵庫との共通点は、印象だけではない
2024年の兵庫県知事選では、候補者だった稲村和美・元尼崎市長が当選すると外国人の地方参政権が成立する、という情報が拡散した。JFCは公約と本人の説明を確認し、誤りと判定している。出典:JFC(2024年11月11日)
候補者の実際の政策から離れた話を広め、不安や反感を先に作る。その間、攻撃された側は否定に追われる。沖縄の事例と兵庫の事例には、有権者の判断材料がすり替えられるという共通の問題がある。
さらに神戸新聞は9月12日、沖縄県知事選の再生上位動画の投稿元に、兵庫県知事選でも多数の動画を発信していたアカウントが複数含まれていたと報じた。似た現象に見えるというだけでなく、発信者の重なりも取材で示されている。出典:神戸新聞NEXT(9月12日)
ただし、投稿者が重なることは、陣営による指示や組織的な連携の証明ではない。その人たちの投稿すべてが偽情報だという意味でもない。県外から選挙を論じること自体に問題があるわけでもない。
問題は、同じ発信空間で繰り返される虚偽や中傷に、どのような歯止めをかけるかだ。誰がどこに住んでいるかより、何を根拠に発信し、誤りを指摘された後に何をしたかを問うべきである。
「デマをばらまけば勝てる」という思い込みを育てるな
兵庫県知事選の結果を、デマだけで説明することはできない。投票した人の判断をひとまとめにして、全員がだまされたと扱うこともできない。JFC自身も、偽・誤情報だけでは選挙を説明できないと論じている。出典:JFCの兵庫県知事選解説
ここからは、私の評価である。恐ろしいのは、虚偽を広めた側が「実際に票を動かせた」と証明されることだけではない。「過激な話で注目を集めれば、細かな検証は後回しにできる」と思い込み、次の選挙でも繰り返すことだ。
うそは短い言葉で流せる。訂正には資料が要り、経緯の説明が要る。反論する側に時間と労力を使わせている間にも、投票日は近づく。訂正が出ても、最初の話を見た全員に届くとは限らない。
この時間差を利用した攻撃を、単なる発信力や選挙の巧さとして評価する空気を作ってはならない。まして、相手への攻撃が自分に有利だからと見逃す政治家がいれば、その姿勢こそ問われる。
「あの界隈は調子に乗った」と吐き捨てて終わるのでは足りない。虚偽で注目を集めても、味方からは止められない。そんな環境を残さないことが必要だ。これは特定の投稿者の内心を確認した断定ではなく、繰り返しを防ぐための政治的な要求である。
良識を語るなら、味方のデマにも「おかしい」と言え
声を上げている人はいる。地元紙やJFCは検証を続け、玉城氏の陣営は抗議している。日刊スポーツによれば、古謝玄太・元那覇市副市長も9月11日、双方の支持者に、憶測や悪意ある切り抜き、人を傷つける発信をやめるよう呼びかけた。出典:日刊スポーツ(9月12日)
この呼びかけは評価する。「誰も何も言っていない」と書けば、事実に反する。
だが、声明を出したことだけで、政治の責任が終わるわけではない。すべての候補者と支援政党に求めたい。一般的な注意喚起に加え、支持者の間で広がる具体的な虚偽を示し、訂正情報を届けてほしい。誤りと確認された投稿には、撤回や訂正を求めてほしい。
自分への中傷には怒り、相手への中傷には沈黙する。そのような選択的な良識は、良識の名に値しない。対立候補の人格を傷つける発信でも「応援してくれる人だから」とかばうなら、政治への信頼を自ら削ることになる。
ここで求めているのは、候補者がネット上の全投稿を管理せよという不可能な要求ではない。自分の支持者に届く言葉を持つ人が、その力を、確認された虚偽の訂正にも使うことである。
被害を受けた本人と、検証する記者だけに、火消しを押しつけるな。普段「社会の分断」を憂える政治家や論客こそ、自分の側に都合のよい攻撃を止める場面で、その言葉の重みを示すべきだ。
うその被害者を、支持政党で選別しない
古謝氏の公式発信と誤認されるポスター風画像についても、JFCは陣営の発信ではないと検証している。古謝氏を批判する人も、その画像を本人の政策の証拠には使えない。出典:JFCの検証紹介(8月30日)
両候補の被害が同じ量だと述べているのではない。被害の規模を比較するには、そのための調査が要る。ここで貫くべきなのは、誰を支持するかで虚偽への態度を変えないという基準だ。
一般の市民が攻撃を恐れて発言できないことまで責めるつもりはない。むしろ、肩書きと発信力を持つ人が前に出て、安心して異議を唱えられる場を作るべきである。
拡散した情報が誤りと分かった人は、削除だけで済ませず、何が違っていたのか、確認できる資料とともに訂正してほしい。メディアも、検証した事実を届ける仕事を投票後で終わらせてはならない。
選挙に勝つことは、うそを正当化する免許にはならない。沖縄で起きている虚偽と中傷を、次の選挙の手本にするな。まともな政治を語るなら、いま、自分の側に都合のよいデマにも「おかしい」と言え。
執筆・検証:カネさん(政経プラスチャンネル運営)+ ChatGPT。AIは構成・論点整理・出典確認を補助。最終編集・公開判断はカネさんが行います。
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偽ポスターや切り抜きの具体的な確認は沖縄県知事選の偽情報を検証、約5000万回という動画再生数の読み方は沖縄知事選のSNS動画、県外発信が多い理由と確認方法で整理しています。選挙を見て感じた率直な問題意識は、noteの沖縄の選挙を見て、いま「それはおかしい」と言いたいに記しました。
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