公益通報のやり方|3つの通報先と保護される条件、通報前後の5つの手順【2026年改正対応】

公益通報のやり方 3つの通報先と5つの手順 法律・公益通報

職場で法令違反に気づいたとき、どこに、どうやって伝えれば法律で守られるのか。公益通報者保護法は、通報先を3つに分け、それぞれに保護の条件を定めています。

この記事では、3つの通報先の違いと保護される条件を条文に沿って整理し、実際に通報するときの手順をまとめます。2026年12月1日に施行される改正法の変更点も反映しています。

この記事の要点

  • 通報先は「勤務先の内部(1号)」「権限のある行政機関(2号)」「報道機関など外部(3号)」の3つ。外に行くほど保護の条件が厳しくなる
  • 行政機関への通報は、氏名などを書いた書面を出せば「思料する」段階でも保護対象になる
  • 通報前に、事実と証拠の整理、通報先の確認、相談窓口の活用をしておくと安全性が高まる

公益通報とは何か|まず対象を確認する

公益通報とは、労働者などが、勤務先などで法令違反(通報対象事実)が起きている、または起きようとしていることを、不正の目的でなく、決められた通報先に知らせることです(公益通報者保護法2条)。

通報対象事実は、法律の別表に掲げられた法律(刑法、食品衛生法、個人情報保護法など)に規定された罪となる事実などに限られます。どんな不満でも対象になるわけではない点に注意が必要です。

項目 内容
通報できる人 労働者、派遣労働者、退職後1年以内の人、役員。2026年12月1日からは業務委託関係にあるフリーランスと、関係終了後1年以内のフリーランスも加わる
対象となる事実 別表に掲げる法律などに規定された罪となる事実、過料の理由となる事実など
目的 不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的などでないこと

制度全体は公益通報者保護法とはで詳しく解説しています。

通報先は3つ|保護される条件の違い

保護の条件は公益通報者保護法3条に定められています。

通報先 例 保護される条件
1号通報:事業者内部 社内の通報窓口、上司、会社が委託した外部窓口(法律事務所など) 通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると「思料する」こと
2号通報:権限のある行政機関 その違反について処分や勧告の権限を持つ省庁、都道府県、市町村など 「信ずるに足りる相当の理由」があること。または「思料」し、かつ氏名・住所、事実の内容、そう考える理由、措置がとられるべき理由を書いた書面を出すこと
3号通報:その他の外部 報道機関、消費者団体、被害を受けている人など、通報が被害の防止に必要と認められる者 「信ずるに足りる相当の理由」があり、かつ法律が定める6つの事情のいずれかに当てはまること

「思料する」は、本人がそう考えている状態です。「信ずるに足りる相当の理由」(真実相当性)は、証拠や関係者の供述などで、そう信じることに客観的な裏付けがある状態を指します。

3号通報で必要な「6つの事情」

報道機関などへの3号通報は、真実相当性に加え、次のいずれかに当てはまる必要があります(3条3号イ〜ヘ)。

号 内容(要旨)
イ 1号・2号の通報をすれば、解雇その他の不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある
ロ 1号の通報をすれば、証拠が隠滅・偽造・変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある
ハ 1号の通報をすれば、事業者が通報者を特定させる情報を正当な理由なく漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある
ニ 事業者から、1号・2号の通報をしないよう正当な理由なく求められた
ホ 書面で1号の通報をした日から20日を過ぎても、調査を行う旨の通知がない、または正当な理由なく調査が行われない
ヘ 個人の生命・身体への危害や、個人の財産への回復できない損害などが発生し、または発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある

出典:e-Gov法令検索「公益通報者保護法」。3号通報の考え方は3号通報とはで詳しく解説しています。

通報するときの5つの手順

手順1|事実を時系列で書き出す

いつ、どこで、誰が、何をしたのか。自分がそれをどう知ったのか。感想や推測は分けて、確認できた事実だけを時系列で書き出します。後で真実相当性が問われたとき、この記録が支えになります。

手順2|証拠を適法な方法で残す

メールや文書の写し、メモ、録音などが考えられます。ただし、業務と無関係な情報を大量に持ち出したり、アクセス権限のない情報を取得したりすると、別の問題になりかねません。証拠の残し方の注意点は公益通報の証拠を残す方法にまとめています。

手順3|通報先を選ぶ

まずは社内窓口(1号)で是正が期待できるかを考えます。社内で握りつぶされるおそれがある、窓口の担当者が当事者と近いといった場合は、権限のある行政機関(2号)が選択肢になります。

どの行政機関に権限があるかは、消費者庁の「公益通報の通報先・相談先 行政機関検索」で調べられます。

手順4|書面で通報し、控えを残す

口頭でも通報はできますが、書面(メールや受付フォームを含む)で通報し、控えを残しておくことをおすすめします。2号通報の書面要件を満たせるほか、1号通報から20日経っても調査の通知がない場合に3号通報へ進む根拠(3条3号ホ)にもなるからです。

手順5|不利益な扱いを受けたら記録し、相談する

通報後に配置転換や降格、嫌がらせなどがあれば、日時と内容を記録します。2026年12月1日以降は、通報から1年以内の解雇・懲戒は通報を理由としたものと推定され、通報を理由とする解雇・懲戒には刑事罰も科されます。

どこに相談できるか

相談先 内容
消費者庁 公益通報者保護制度相談ダイヤル 03-3507-9262(平日9時30分〜12時30分、13時30分〜17時30分)。制度の解釈、通報先の照会、不利益取扱いの相談など。匿名可。個別の通報の受付はしていない
弁護士会の法律相談 個別の事案に即した法的助言
労働局の総合労働相談コーナー 解雇や配置転換など労働問題全般

出典:消費者庁「公益通報者保護制度相談ダイヤル」

公務員が通報する場合

国や自治体の職員も公益通報者保護法の対象です。自治体の内部通報窓口への通報は1号通報、その違反に権限を持つ別の行政機関への通報は2号通報にあたります。

兵庫県の告発文書問題では、元県民局長が報道機関などに配布した文書が3号通報に当たるかが争点になりました。県が設置した第三者調査委員会は外部への公益通報に当たり得ると評価し、斎藤元彦・兵庫県知事は保護される3号通報ではないとの立場を維持しています。経緯は兵庫県告発文書問題とはをご覧ください。

よくある質問

Q. 匿名で通報しても保護されますか?

匿名の通報も公益通報になり得ます。ただし、2号通報の書面要件は氏名などの記載が前提です。また匿名だと、事業者が調査結果を伝えたり追加で事情を聞いたりしにくくなります。

Q. 通報した事実が間違っていたら責任を問われますか?

1号通報は「思料する」で足ります。2号・3号は真実相当性が必要なため、裏付けのないまま外部に通報すると保護されない可能性があります。手順1・2の事実整理と証拠確保が重要なのはこのためです。

Q. 通報しないよう会社に求められたら?

正当な理由なく通報しないよう求められた場合、3号通報の要件の一つ(3条3号ニ)に当たります。2026年12月1日からは、通報をしない旨の合意を求める行為自体が法律で禁止されます(11条の2)。

まとめ

  • 通報先は内部(1号)、行政機関(2号)、報道機関など外部(3号)の3つ
  • 1号は「思料」、2号は真実相当性または書面、3号は真実相当性と6つの事情のいずれか
  • 事実の記録、適法な証拠確保、書面での通報と控えの保存が自分を守る
  • 迷ったら消費者庁の相談ダイヤルや弁護士に相談する

この記事は制度の一般的な説明です。個別の事案は弁護士などの専門家にご相談ください。

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更新履歴:2026年9月25日 公開

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